短歌
湿る風発車のベルが断ち切った車窓に流れる灰と緑
一万年紙上を滑る金細工私の癖で形が変わる
幾重にも艶めく鱗迫りくる波打ち際に境界線
黒板と部屋の残暑と床の上転がるペンの淡い橙
くしゃっ、ぐしゃり踏み潰された蝉の羽のかけらを乗せて涼風が吹く
帰り道シャッター街に吹き抜けた風にチリリと風鈴がなく
いもうとがわたしの着てた浴衣着てはしゃぐ姿は昔の私
短冊の5枚吊られて静かなる児童館前日曜日かな
ものを食うその営みも緩慢な十五の痛みを笑いし母よ
蝉時雨の一匹ごとの叫びさえ聴き分けられず電柱を蹴る
ぶらんこを後ろにけとばしスカアトをひざにけり上げ門を見つめる