は水が……

りつあん

 

 俺、田代五月。星のことが大・大・大好きな中学3年生。あ、言っとくと一応女子。話し方と一人称完全に男だけど『セイブツガクテキ』には雌。読者の皆さんを混乱させてしまったなら申し訳ない。

 

 全く、作者がサボって俺に話書けって押しつけてきやがったんだが、本の中で本の登場人物がその話をまるっと語るのってかなりまどろっこしいのでやめてほしい。ってそんなこと言ったら聞いてくれるような作者だったら、俺に代わりに語らせるなんて無謀なこと、まずしないとも思うが。

 

 まあいい。話を変えよう。こんなこと語ったらめちゃくちゃ文字くっちまう。さっきも言ったが俺は星が好きだ。愛していると言っても過言ではなかろう。だが学校で星が好きって言ったらさも変人みたいに言われる。なんでなんだ! 普通に星ってキラキラしてて綺麗だろ? まぁ、素直に綺麗なものを綺麗って言えちゃう中学生っていまどき少ないか、客観的に見て。そう思ったら俺って確かに変かも。

 

 話変えちゃうけど最近親がマジでうるせぇ。勉強しろしろって。みんなは身に覚え、ない? 親が受験にかこつけて勉強するように迫ってくるアレ。ほんとウザい。無理矢理やらせたところで本人の身につかないって気づかねぇなんてなんたるアホな親。え、そんなこと言われたことない? なんという優秀な親御さんなんだ。羨ましいぜまったく。……は? 自分から勉強してたぁ? うっわ優等生。そりゃあなんも言われねーだろうな。なあ、勉強ってそんな楽しいもん? ふぅん、知識を得るのが楽しいんだ。わかんなくもないけど俺はショージキそんな知識一つ詰め込む前に星眺めて星のことを学ぶ方が好きだな。で、最近俺は毎晩家の屋根(言い忘れてたが俺の家は一戸建てだ)にのぼって星空を眺めている。そこだったらまず人は来ないしそもそも屋根の上って前までは気づいてなかったけど星空を眺めるにはとっておきの特等席なんだよな。だから俺は毛布やジュースを持ち込んでそこで毎晩数時間、至福の時を過ごしている。

 

 そう、過ごしていたのだが。そこなら邪魔されないと思ってたのに最近俺の姉たる優希が一緒に星を眺めてることがある。なんでまたいきなりそんなとこまで来るかな。俺にも言えてることだけど。まぁ、なんやかんや話しかけてくるのは鬱陶しいがそれさえ我慢すれば特に視界を遮られこともないから放置している。

 

 優希は今高校2年だ……確か。ピリピリしてる訳でもないから受験生じゃあないんだろう、うん。まず間違いなく高校2年だ。そしてちょうど今神話に興味があるらしい。で、やたら俺にギリシア神話に出てくる神々とローマ神話に出てくる神々の話とか星座にまつわる神話とか云々かんぬん言ってくるからうるさいったりゃない。おもわず興味ないって言っちまった。そしたら――。

 

「頭は水がたくさんあるんだって。喉が乾いたなあ」

 

 って。なんだそれ。どんな冗談だ。試しに冗談で返してみる。

 

「だから? 俺の頭でもかち割って飲んでみる?」

 

「まさか。本物の頭の話、ここでするわけないでしょう? 星座の話よ星座。ほら、あれ水瓶座の頭に見えない? あれってほんとは頭じゃなくて水瓶を形作ると言われてる星なんだヨ。水瓶には水、いっぱいだろうなぁ、って思って言ってみたんだぁ」

 

 オイ。おまえは悪魔か。人をびびらせんじゃねぇ。って、俺、水瓶座生まれだからさすがに水瓶座の神話は知ってるが水瓶に入ってるのは水じゃねぇし。酒だし。こいつ神話に興味あるんじゃねぇのか。

 

「水瓶に入ってんのは水じゃねぇ。酒だ。神話に興味ねぇ俺が知ってんのにおまえ知らなかったのか?」

 

「知ってたよぉ。やっぱりあんた、興味ないって言いながら実は興味あったんだね。いっつもホロスコープ眺めてるからきっと星座とかに興味あるんだろうなって思ってたのにそーゆー話したら興味ないって言われたんだもん、ムカつくに決まってるでしょ。親に隠したいなら黙っててあげるからさ、せめて同じ星好き同士、そういうことが好きなら好きって正直に言ってよ」

 

 うっ。アホな姉だけど見るところは見ていたみたいだ。そう、俺は占星術に興味がある。占星術師になりたいぐらい。で、毎日星を見て星座のことを勉強したり星を見て癒やされたりしてた。占星術師になりたいって言ったら多分親は反対する。それもよくわからない理不尽な理由で。それは絶対にイヤだったから誰にも言うまいと思っていた。いやぁ、こんなとこからバレるなんて思ってもみなかったけど、理解者を得るって案外いいもんだね。

 

 優希には感謝してもしきれない。けど、そんなこと言ったら優希が調子こくのは火を見るよりも明らかなので。本人には言わないことにします。だから読者の皆さん、優希には何も言わないでいてくれ。もし万が一出会ってしまっても。そこんとこ、よろしくっ!

 

  

 

お題

 

「頭は水がたくさんあるんだって。喉が乾いたなあ」