恐怖のトンネル
りつあん
ここはどこ。近所のレストラン。なんでここにいるの。みんなに会うため。なぜか今、横に座っているきららに召喚されたんだ。
私、きらら、だいと祥の四人は高校の間、ずっと同じクラスだった。しかも幼稚園から一緒と来ている。もうこれは運命だとしか思えない。……なーんて冗談はさておき。私たちは幼稚園からの腐れ縁で大学生になった今でもつるんでいる仲間。
「ねーねー、暑くない? 暑いと来たらやっぱり怪談! というわけで怪談でもしよう!」
「えぇっ、俺怪談大っ嫌いなんだよ、勘弁」
きららの提案に祥が完全にビビってる。ふふふ。滅多にビビらない祥がビビるなんて面白いかも。私は別にどっちでもいい。怖いのは好きでも嫌いでもない。まあ、きららの目的もどうせ大学の宿題なんだろうし。付き合おうかな。
「ねえきらら、それ、大学の課題なんだろ?」
うわぁ、だいに先越されちゃった。私が聞きたかったのに。
「ふっふふーん。それが実は違うんだぁ。あのね、私映画監督として有名なM監督の下でバイトしてるんだけどね、そこの宿題なんだぁ。ね、いいでしょ? ちょっとぐらい」
おお、意外。きららがバイトしてるなんて。
「ええっ、そうなの? ねえ、バイト楽しい?」
「うん! めっちゃくちゃ。りっちゃんも来ない?」
「いやー遠慮しとく。しんどそうじゃん」
「そこがいいんじゃん。えー、だいは? 祥は? 来ない?」
「うーん、遠慮しとく。多分予定も合わないだろうし」
「俺もパス。そもそも怪談が宿題なんて無理。生理的に受け付けない」
「ええー。りっちゃんもだいも祥も来ないのー? さっみしー」
ふーん、みんなパスするんだ。まぁわからなくもない。だいは起業して大学に通いながら社長としても頑張ってる。祥はどうやら学内のバンドでキーボードを担当してる、らしい。そんなみんなに対して私はなーんにもしてない。みんなすごいなあ。
「おーい、りっちゃん。どこ行ってるのー?」
あっ、いけない。ぼんやりしてた。やばいやばい。
「えーっ、大丈夫?」
きららはそう言った後、ちょっと考えるそぶりを見せてから、
「まぁいいや。じゃあ、だいから始めよっか」
と、悪魔の、否天使の笑みを浮かべて言った。
「えー! まじでやんの? 嫌だぁ」
「そんなに嫌なら耳ふさいどけばいいんだよ。ということでだい、よろしく!」
「了解。じゃあ、いこっか。僕の知り合いにタクシー運転手やってるやつがいるんだけど。そいつが教えてくれたんだけどね、ほらお化けが出るって有名なトンネルあるじゃん。そこで女の客を乗せたんだって。で、まあそのトンネルに入ったんだよ。そしてトンネルを抜けてさ、後部座席を見たらそこにいたのはさっき乗せたのとは別の女だったんだ」
ええっ。それほんと?
だいの声が続けて言う。
「真相はなんと……」
そしてそこでだいはいきなりくぎってみんなを見回し、にやりとした。ああ、もう。
「だい、もったいぶらないで早く言っちゃって」
「あ、律、悪い悪い。でな運転手は客をよーく見たわけ。そしたらなんとお化粧してただけだったんだ」
「うっわすげえオチ。で?」
「うん、女は怖いなっていうことでおしまい」
「なぁんかしまらないなぁ」
「まあいいや。みんなの反応面白かったよありがとう」
「おいきらら。俺らが怪談聞いた時の反応見るためだけに集めたのか?」
「ふふふっ、もちろん。ご協力感謝します!」
きららを除いた私たち三人は思いっきり脱力した。一番恐ろしいのはきららかもしれない。女って、やっぱり怖いんだなぁ。