死神job 番外編 ~死神の昔話~
忍が死神と契約し、父親を捜していたある日のこと……。
「なあ、死神。お前の過去の話とかないのか? 面白そうなやつ」
「面白そうなやつ? 人に話をさせといて、注文までつけんなよ」
「まあまあ」
「あんまり面白くないだろうが、俺が死神になった経緯くらいなら話してやってもいいぞ」
「ならそれでもいいや」
「なんで上から目線なんだよ」
これは忍と契約をした死神の、過去のお話。
忍と出会う前の、死神が死神となるまでの物語――。
前に俺の名前は言ったよな? え? 覚えてない? おいおい、前に言ったろ?「正直者のてっちゃん」って。まあ覚えてないなら仕方ねぇか。なんにしろ、これから俺こと正直者のてっちゃんが――てっちゃんこと死神になる前の俺がどうして、どうやって今に至るか教えてやろう。
もともと俺が死神じゃないってのは覚えてるよな? あっちの世界では死神か天使の二つしか仕事がないってことも。そして俺らあの世の住人は仕事に就かないと消えてしまう。だから嫌でもどちらかに就くしかないんだが、俺はその時迷っていた。正直、どっちの仕事にも魅力を感じられなかったんだ。大した魅力もない仕事に就いてしんどい思いをするくらいなら、もう消えちまったほうがいいんじゃねぇかと思ってたんだよ。というか、もう消えそうだったんだよ実際。残りの命もあと一日か二日か、そんなレベルだった。
「あ、そういえば気になってることがあるんだけどさ。もともとの死神の寿命っていくらくらいなんだ?」
「ん? そうだな、だいたい四百年くらいだな」
「さすが死神だな」
失礼、話を戻そう。
そんな時だった。とある死神の女性が俺に寿命をわけてくれたんだ。前にも言ったが、天命を迎えた者に命を与えるのは重罪だ。問答無用で消されるレベルのな。でもそれほどのことを彼女は俺に施してくれたんだ。俺が仕事に就けばよかっただけのことなのに、俺がごねたせいで大罪を負わせてしまった。すごい申し訳なかった。それと同時に、俺なんかのために貴重な命を削ってくれた彼女を尊敬した。こんな人になりたいと思った。だから俺は彼女の後を追って死神になったんだ。
だが、問題が起きた。大罪人である彼女が見つかっちまった。あの人は自分が見つかったとわかると、逃げも隠れもせずに素直に捕まった。確かに抵抗すればより罪は重くなるが、罪の内容が内容なだけに、普通に死刑だ。執行人は同じ死神。しかも仕事場の仲間達だ。あいつらが彼女を処刑するときになんて言ったか知ってるか?
「こうなると思っていたぞ」「この犯罪者が!」「失せろ!」
そのほか色んな罵詈雑言……。彼女がなにをしたんだよ! 俺を助けてくれただけじゃねぇか! 人助けは罪なのかよ!
その時の俺はそんな感情が抑えられなかった。彼女の最後を見届けずに、俺は飛び出していた。今では後悔してるよ。なんで立ち会わなかったんだろうってな。お前に協力しているのはそういう理由もある。探す目的はなんにしろ、後悔することはするな。
「これで俺の昔話はおしまいだ」
「なんだよ、ちょっといい話じゃないか」
「この程度の話、どこにでも転がってるぞ」
「いや、そんなことないだろ」
どこにでも転がってたら、大罪人がごろごろいることになるじゃないか。
「まあ、こんなくだらない話聞くより、さっさと御前の親父を捜しに行こうぜ」
「さっさと見つかればいいんだけどな……」
こうして彼らはまた人探しの旅へと出かけたのだが、結末は本編で……。